MPWでは第1のミッションとして、7フィート・ミディアムパワークラスのブランクス単体重量を55gアンダーに設定しました。I-JACKなどのプラグ・・・わずか2ケ分ほどの重さです。もはや、単なる軽量化の域を超えた、驚異的な軽さです。ブランクス単体重量の圧倒的な軽量化は、ダイレクタビリティをもたらします。たとえば、金属の棒に虫がとまってもその重量変化を感じる人はいませんが(笑)、細い紙縒り(こより)や線香花火の先端に虫が止まった時、その重量変化を誰もが捉えることができます。つまり、軽さこそ「感度」に直結する要素であり、ロッドとアングラーの感覚や動作をダイレクトに反映する、リニアリティな運動性能を高める要因です。
プロジェクトLAIHAでは、メガバスファクトリーで過去に量産性の面で導入できなかった工法や、将来に向けて現在実験中のあらゆるカットパターンやローリング工法、プリプレグシートのレイヤー角度、裁断形状、プライ数を模索し、バスロッドブランクスの理想像を追求しました。
そして、初代ARMSから歴代デストロイヤーシリーズを手掛けたYUKI ITOからの第2のミッションは、潰れ、ネジレに強く、高い剛性を発揮させること。破壊強度はメガバスロッドのおよそ15~20%アップさせるというものでした。軽くて「ストロング」であること・・・これが、絶対条件でした。
あらゆる実験中の手法を幾パターン試し、最終的に、ついに7フィートMパワークラスでリフト角60度において、8kgオーバーリフトを達成した瞬間、ロッドビルドのまったく新しい歴史の幕開けに立ち会えた想いがして、鳥肌が立ちました。デストロイヤーやエヴォルジオン、ヴァルキリーを超えることは決して容易ではありません。
しかし、この実験を行った弊社開発部内チームの単発製作(ワンオフ)であれば、このように、不可能を可能にするテクノロジーを導入することができる。そこから、MPWに集結したワークスチームによって、プロジェクトLAIHAが立ち上がりました。
ファーストプロトはMegabass of America に送りました。現地でSTWブランドを展開するデベロップメントチームのインプレッションでは、B.A.S.Sエリートシリーズに参戦するチームメイトのクリスからの要望だった究極的感度が驚異的な軽さと運動性能で具現化されている、という好感触を得ました。
各モデル、さらにプレステージを高めるフィッシングパフォーマンスを実現するため、さらなるブランクの改良を施し、ハイテーパー化するなど煮詰めていきました。プリプレグの角度を変え、プライ数を変更して、なおファイナルフィニッシュにも手を加え、シャフト性能をポジティブに引き上げる製法として、1mmピッチで巻く特殊マイクロピッチテーピングも施しました。ブランクコアに追従性がある一方で、表層を硬化することで強靭で共振性に優れ、金属的な感度を得ることに成功しています。
こうしてセカンドサンプルが完成したのち、日米でテストを行い、いよいよファイナルサンプルの製作に入りました。ファイナルプロトでは、セカンドまでのあらゆる数値面での向上化に加え、一方では数値として表せない感覚的な、「ロッド全体のフィール」をアップする作業に取り組みました。何日も連続でハードな釣りをして、些細な雑味さえ取り除く作業です。強度を維持、またはさらに向上化させた上で各パーツを0.1g単位で軽量化し、こうしてロッドバランスを整えてきました。美しさを損なわない限界厚でコーティングを極力薄く、ガイドフット寸法+アルファで捲き上げるタイトスレッディングなど、LAIHAブランクスのパフォーマンスを損なわないよう配慮した装飾ですから、スレッド幅も1mmレベルで妥協していません。
それを製作できるマイスターは、メガバスファクトリーの中でも特に専門スキルに特化した選りすぐりの人材となります。職人芸を駆使し、「作品」が作り込める人材です。彼らは、歴代のメガバスロッドに精通していますから、アートともいえる匠のフィニッシュが期待できることでしょう。