いまからおよそ33年前に私が手づくりしていた初代アームズがまさにそうだったように、プロジェクトLAIHAは、バスロッドの概念を変える未知なるテクノロジーを注ぎ込んで製作します。ＭＰＷからデザインを依頼された時、創業者として、「エルゴノミクス、パフォーマンス、テクノロジー、アートなどすべてにおいて、アングラーの想像を超えるロッドでなければいけない」と考えました。私自身もLAIHAプロジェクトテスターの一人で、実質７６本の各モデルデリバリーとなってしまうのは大変申し訳ないですが、目の肥えた歴代メガバスロッドのヘヴィユーザーの知見も融合させ、次期メガバス製ロッドシリーズへとフィードバックしていくためです。

バスロッドのテクノロジーエヴォリューションを推進する壮大なプロジェクトに関与する特別な77人のうちの一人として、選ばれたアングラーの方々と共にバスロッドの未来を創造していきます。
メガバスグループ内で様々なセクションがこのプロジェクトに関与しています。Megabass of America Inc.のデベロップメント（開発部）チームのエースアングラー、クリス・ザルディンと現地開発スタッフも関与するワークスですから、刀鍛冶の来派（ライハ）とはまた違った意味で、ＭＰＷのＬＡＩＨＡは、オープン（開かれた）でグローバルなテクノロジーの集積です。

なお、ブランクスに施した日本の伝統美を解釈して表現したアートスレッディングは、ブランクスのパフォーマンスを際立たせるため、極力ガイドフットの長さ＋最小限の範囲で施し、コーティングについても美しさを追求しつつ、最小限のバーニッシュ使用量に留めました。
私やザルディンの他、フィールド経験値が豊富なメガバスファクトリースタッフのフィールドテストから、握り心地やバランス、様々な使用状況下におけるテストを経て、最適なエルゴノミクスを割り出した新型のヘッドロッキングユニットは、メガバスロッドのスタンダードモデルで採用されているものよりも、ブランクスのバットエンド支軸点を最大マイナス１５ｍｍ以上、ロッド重量物が集中するリールシート側にオフセットさせるデザインをしました。

シャフトとして仕事をする部分をより長く、運動するシャフトの支軸剛性もさらに高めるためです。その上で、０．１ｇ単位で強度計算における構造解析をしながら慎重に贅肉をそぎ落とし、極めてエアリーなストラクチャーデザイニングで仕上げました。
ブランクス構造は、アングラーには見えないところですが、それは、「伝統的な数寄屋の襖（ふすま）の裏板」のごとく、普段見えないところだけに、経年耐用を考慮し高度な工法を用いた最高の素材を導入する、匠の造りを実施しました。

ブランクスに永続的な極限の運動性能を与えるためです。現時点で考え得る究極解ともいえる試験的な構造を、アイティオーエンジニアリングの山下CD（チーフディレクター）がプロジェクトリーダーとなって積極的に導入をトライ、試行錯誤を経て、我々は現時点で究極といえる最高到達点を見出しました。このＬＡＩＨＡ特有の構造を持つロッドの量産は現時点では困難ですが、一本一本プロトタイプ製作ラインで仕上げ、メガバスロッドを愛竿とし右腕とされているアングラーで、我々と想いを共有化する歴代メガバスロッドのヘヴィユーザーに対して、ごく少量の試作品として提供することが可能です。

LAIHAを新しい武器として、Bassmaster Elite シリーズでさらに自分のゲームレベルを上げる事が待ち遠しい。シーズン中、多々遭遇するトーナメントが及ぼすプレッシャーによってバイトが渋るシチュエーションでもLAIHAを手にする事で今までロッドに伝わりづらかった微小なバイトも感知することが可能になるから、検量スケールへ運べるウェイトが一気に増える事になるだろう。
一日８時間と限られた時間の中で、”フィッシング”というパズルをコンプリートしなければならないトーナメントでは、常に１００％効率的でなければならない。ボトムが砂なのか、岩、泥、またはグラス混在なのか、など、解像度の高い情報を、誰よりもいち早く感知したい。他のロッドが見逃してしまうような極わずかな手がかりを見出す事が、トーナメントを制覇するのに欠かせない必要条件だ。

デストロイヤーシリーズがまさにそうだが、LAIHAブランクスの傑出したレスポンスは、僕にとって必要な手がかりを探す上で、さらに効率よくハイレベルなゲームを展開することが可能となる。
たとえばF5.1/2-70XLは、全てのバスルアーを使いこなす事が可能だ。フロロ使用でのジグ、ワーム、スピナーベイト、軽めのバズベイトから、僕がサーチで絶対使うDOG-Xシリーズのトップウォーターまで。ナイロンラインだったら、自分のフェイバリットのワンテンMax LBOなど大型ジャークベイトをガンターズビルの沈んだベジテーションの上などでも積極的に導入している。ヘヴィアクションロッドとは信じられない取り回しの良さとレスポンシヴな運動性能を具現化している。この新時代のバーサタリティモデルをLAIHAテクノロジーが具現化した。凄いことだ。

F4.1/2-74XLは、僕にとって”パワーフィネス”モデル。特にスポーン前後のシーズンで活躍するモデルだ。１２LB.ラインのおよそ３．５インチ（約９ｃｍ）のリーダーでの”パワーショット”（ヘヴィドロップショット）でピンスポットを正確に狙い撃ち、ベッドがありそうな複雑な場所にも果敢にピッチングするモデルだ。この時、ロッドの長さを最大限に活用できるバーティカルスウィープフックセットで上顎を貫く事で、ファイト中のバラシを極限まで減らす事が出来る。このテクニックを遂行できるスペシャルなロッドアクションは他にはなかった。ハイテンションながら、同時にしなやかなベンドをもたらす新たな高弾性グラファイト製法のシャフトは、バイトを乗せやすく、ファイト中も安定したテンションを与え続けられるから、カヴァーから躊躇なくハイスコアを引き出せる。フィネスゲームでハイスコアをカヴァーから引き出せるんだ。ライバルたちも欲しがるだろう。

４０LB.のブレイドライン（PE）の使用にもフィットさせているから、実はトップウォーターのロングキャストで狙うスモールマウスにも使える一面も持ち合わせている。勝つためのSTWの経験値をあますことなくフィードバックしたモデルだ。
あと、言わせてもらうならF3-70XSLは、ドロップショットやネコリグでの使用では一番のお気に入りモデルだ。いま現在、最前戦のエリートシリーズで用いられている最も年々使用頻度が高まっているスピニングタックルだ。トレンドのスピニングリールとブレイド（PE）ライン＋フロロリーダーのアウトフィットで、グレートレイクスなどでの４０フィート以上の深場で大活躍をみせたこのモデルに関しては、僕にとって“感じ取れないものは存在しない”という境地へと開眼させてくれた、新時代の”バイト感知マスター”だ。

7フィートレングスは、ジャパンスタイルのフィネス（ネコリグ）で広範囲を手返し良くサーチできるから、ハードベイトが使えない状況では絶対に欠かせない。
とにかくLAIHAは、歴代のメガバスロッドのアングラーとテクノロジストたちが集結し、すべてのモデルがパフォーマンス・センシティビリティ・ダイレクタビリティ・バランス・デザインについて、まったく新しい世界を見せているんだ。

ＭＰＷでは第1のミッションとして、７フィート・ミディアムパワークラスのブランクス単体重量を55gアンダーに設定しました。Ｉ－ＪＡＣＫなどのプラグ・・・わずか2ケ分ほどの重さです。もはや、単なる軽量化の域を超えた、驚異的な軽さです。ブランクス単体重量の圧倒的な軽量化は、ダイレクタビリティをもたらします。たとえば、金属の棒に虫がとまってもその重量変化を感じる人はいませんが（笑）、細い紙縒り（こより）や線香花火の先端に虫が止まった時、その重量変化を誰もが捉えることができます。つまり、軽さこそ「感度」に直結する要素であり、ロッドとアングラーの感覚や動作をダイレクトに反映する、リニアリティな運動性能を高める要因です。

プロジェクトＬＡＩＨＡでは、メガバスファクトリーで過去に量産性の面で導入できなかった工法や、将来に向けて現在実験中のあらゆるカットパターンやローリング工法、プリプレグシートのレイヤー角度、裁断形状、プライ数を模索し、バスロッドブランクスの理想像を追求しました。
そして、初代ＡＲＭＳから歴代デストロイヤーシリーズを手掛けたＹＵＫＩ　ＩＴＯからの第2のミッションは、潰れ、ネジレに強く、高い剛性を発揮させること。破壊強度はメガバスロッドのおよそ15～20%アップさせるというものでした。軽くて「ストロング」であること・・・これが、絶対条件でした。

あらゆる実験中の手法を幾パターン試し、最終的に、ついに7フィートMパワークラスでリフト角60度において、8kgオーバーリフトを達成した瞬間、ロッドビルドのまったく新しい歴史の幕開けに立ち会えた想いがして、鳥肌が立ちました。デストロイヤーやエヴォルジオン、ヴァルキリーを超えることは決して容易ではありません。
しかし、この実験を行った弊社開発部内チームの単発製作（ワンオフ）であれば、このように、不可能を可能にするテクノロジーを導入することができる。そこから、ＭＰＷに集結したワークスチームによって、プロジェクトＬＡＩＨＡが立ち上がりました。

ファーストプロトはMegabass of America に送りました。現地でＳＴＷブランドを展開するデベロップメントチームのインプレッションでは、Ｂ．Ａ．Ｓ．Ｓエリートシリーズに参戦するチームメイトのクリスからの要望だった究極的感度が驚異的な軽さと運動性能で具現化されている、という好感触を得ました。
各モデル、さらにプレステージを高めるフィッシングパフォーマンスを実現するため、さらなるブランクの改良を施し、ハイテーパー化するなど煮詰めていきました。プリプレグの角度を変え、プライ数を変更して、なおファイナルフィニッシュにも手を加え、シャフト性能をポジティブに引き上げる製法として、1mmピッチで巻く特殊マイクロピッチテーピングも施しました。ブランクコアに追従性がある一方で、表層を硬化することで強靭で共振性に優れ、金属的な感度を得ることに成功しています。

こうしてセカンドサンプルが完成したのち、日米でテストを行い、いよいよファイナルサンプルの製作に入りました。ファイナルプロトでは、セカンドまでのあらゆる数値面での向上化に加え、一方では数値として表せない感覚的な、「ロッド全体のフィール」をアップする作業に取り組みました。何日も連続でハードな釣りをして、些細な雑味さえ取り除く作業です。強度を維持、またはさらに向上化させた上で各パーツを0.1g単位で軽量化し、こうしてロッドバランスを整えてきました。美しさを損なわない限界厚でコーティングを極力薄く、ガイドフット寸法＋アルファで捲き上げるタイトスレッディングなど、ＬＡＩＨＡブランクスのパフォーマンスを損なわないよう配慮した装飾ですから、スレッド幅も1mmレベルで妥協していません。

それを製作できるマイスターは、メガバスファクトリーの中でも特に専門スキルに特化した選りすぐりの人材となります。職人芸を駆使し、「作品」が作り込める人材です。彼らは、歴代のメガバスロッドに精通していますから、アートともいえる匠のフィニッシュが期待できることでしょう。